【黒帯】EV充電の「個別・部分設置工事」は損をする!マンション駐車場全区画の「一括インフラ工事」が費用を3割削減する理由

2025年10月7日

【カナダ最新調査】個別・部分設置工事は「資産座礁」を招く! EV充電インフラの計画的な一括導入がもたらす驚きの経済効果

この記事でわかること

  • カナダの最新調査報告書が示す、EV充電の「個別・部分設置工事」がなぜ長期的に見て割高になるのか(計画的な一括・全区画工事はライフサイクルコストを3割以上削減)
  • 個別・部分設置工事が引き起こす「資産座礁」と「電力容量の枯渇」という、マンションが抱える最大のリスクとは何か
  • 一括・全区画工事を可能にする重要技術「EVEMS」の仕組みと、「EV Ready」「EV Capable」という整備レベルの具体的な違い

 はじめに


電気自動車(EV)への移行が加速する中、分譲マンションのEV充電設備導入は避けて通れない課題です。しかし、多くの管理組合で「まだEV所有者は少ないから、希望者が出たらその都度工事すれば良い」という意見が根強くあります。


この記事では、カナダの最新調査レポート『Futureproofing Multifamily Buildings for EV Charging』を基に、その「個別・部分設置工事」という考え方がいかに危険で、経済的損失をもたらすかを解説します。



結論から言えば、最初に全区画対応の「一括・全区画インフラ工事」を行う方が、マンション全体の費用負担も、社会全体のコスト・補助金も大幅に削減できるのです。


 海外調査から見えた「個別・部分設置工事」のワナ 


カナダのエネルギー・気候変動コンサルティング会社Dunskyが2024年に公開したレポートは、集合住宅における場当たり的なEV充電設備の増設に警鐘を鳴らしています。


このレポートが指摘する最大の問題は、計画なく行われる個別・部分設置工事が、「ライフサイクルで見た場合に非常に高コスト」であり、「将来の拡張に対応できず、設置した設備が無駄になる『資産座礁』のリスクを抱える」という点です。

コスト比較で見る「一括・全区画工事」の経済性

レポート内のライフサイクルコスト分析(正味現在価値)によれば、充電設備1台あたりの総コストは以下のようになります。


  • 場当たり的な個別・部分設置工事(Piecemeal): 約6,290ドル/台
  • 計画的な一括・全区画インフラ工事(EV Ready Level 2): 約4,240ドル/台


この差は実に3割以上。レポートの分析に基づけば、目先の費用を抑えるための個別・部分設置工事は、長い目で見るとマンション全体で大きな損をすることになるのです。包括的なアプローチは、資材の一括購入や工事の効率化により、1台あたりのコストを劇的に下げることができます。

「資産座礁」と「電力容量の枯渇」という最大のリスク

個別・部分設置工事の本当の恐ろしさは、コストだけではありません。


  1. 資産座礁: 最初期に設置した充電設備や配線が、将来の全体計画と互換性がなく、結局すべて撤去・再工事になるリスクです。これはまさに「安物買いの銭失い」です。
  2. 電力容量の枯渇: もっと深刻なのが、マンション全体の電力容量を初期のEVオーナーが「早い者勝ち」で使い切ってしまう問題です。後から充電設備を設置したい住民は、非常に高額な変電設備の増強工事を迫られるか、最悪の場合、設置を諦めなければなりません。これは住民間の深刻な不公平感を生み出します。

「一括・全区画工事」を可能にする重要技術


「全区画にインフラを整備したら、電力不足になるのでは?」という疑問は当然です。その解決策として、レポートは以下の技術の重要性を強調しています。

1. EVEMS(EVエネルギーマネジメントシステム)

EVEMSとは、電気回路の容量を超えないように、複数のEVへの電力供給を賢く監視・制御・負荷分散するシステムです。これにより、建物の電力契約を上げることなく、多くの車両の充電が可能になります。全ての車が同時に最大出力で充電することは稀であるため、EVEMSが自動で電力を融通し、効率的な充電を実現します。

2. 「EV Ready」と「EV Capable」という整備レベル

一括・全区画工事は、目的に応じて整備レベルを選べます。レポートが示す主な選択肢は以下の通りです。


  • EV Ready: 将来の充電器設置に備え、各駐車区画まで専用の配線とコンセント(または接続箱)を設置しておく状態です。住民はEV購入後、簡単な工事で3kWや6kW充電器を設置可能、または工事不要でコンセントに充電ケーブルを接続するだけで済みます。レポートはこれを最も効果的なアプローチとして推奨しています。


  • EV Capable: 各区画への配線は行わず、将来の配線工事に備えて、共用部の分電盤に十分なスペースと容量を確保しておく状態を指します。EV Readyより初期費用は抑えられますが、EV導入時に配線工事が必要になります。

 反対意見への回答:全区画設置は「充電器」の設置ではない


「補助金を使って全車室に設置するのは無駄だ」という意見は、非常に重要な誤解に基づいています。


計画的な一括・全区画工事、すなわち「包括的な先行工事(Comprehensive Futureproofing)」とは充電器本体(EVSE)を全区画に設置することではありません。



これは、上記で解説した「EV Ready」の状態にすることを指します。つまり、高価な充電器本体を無駄に並べるのではなく、将来のための「電気の通り道」を一度の工事で安く、公平に整備しておく、という極めて合理的な考え方なのです。


 WeChargeのようなソリューションの活用


こうした計画的なインフラ導入には、専門的な知見が必要です。WeChargeのようなマンション特化型サービスは、Dunskyレポートが示す課題を解決します。


  • 電力契約リスクの回避: WeChargeが電力会社と直接契約を結ぶため、マンション共用部の電気代に影響を与えません。


  • 公平な課金システム: EVEMSを活用し、充電した分だけを個人のアプリで自動精算。非EVユーザーに負担はかかりません。



  • 計画導入のサポート: 補助金の活用から、最適なインフラ設計(EV Readyなど)、管理組合での合意形成までをトータルで支援します。

 今こそ「一括・全区画インフラ工事」を導入するメリット


カナダのレポートが示す通り、EV充電インフラは計画的な先行投資が賢明です。今、導入を決断すべき理由は明確です。


  • メリット1:総コストを大幅に削減できる 目先の個別工事を繰り返すより、ライフサイクルコストで3割以上もお得です。将来発生するであろう高額な追加工事のリスクも回避できます。


  • メリット2:マンションの資産価値が向上する 全区画EV対応済という事実は、物件の大きな付加価値となります。レポートでも「ますます求められるアメニティ」として資産価値向上への貢献が指摘されています。


  • メリット3:将来の全居住者へ公平性を担保できる 「早い者勝ち」による不公平を防ぎ、将来EVに乗り換える全ての住民が、安価で簡単に自宅充電を始められる環境を保証します。



 まとめ:マンションのEV充電は「全体最適」で考える時代へ


「希望者が出たら個別に対応」という考えは、一見合理的ですが、海外の最新調査はその真逆の結果を示しました。場当たり的な個別・部分設置工事は、最終的にマンション全体で大きな経済的損失と住民間の不公平を生み出す可能性が極めて高いのです。


「全区画への設置」とは、無駄なEV充電器を並べることではなく、将来を見据え、「EV Ready」という形で電気のインフラを一度の工事で、安く、賢く、公平に整備することです。


「うちのマンションではまだ先の話…」と考えている管理組合こそ、今すぐ計画的な「一括・全区画インフラ工事」の検討を始めるべきです。それが、将来の資産価値を守り、全居住者の利益につながる唯一の道と言えるでしょう。

参考リンク