マンションEV充電導入成功事例:「徹底した受益者負担」で全区画設置を実現したコスモ 麻布十番(東京都)

2025年5月9日

この記事でわかること

  • EV所有者であり理事長でもある小松崎氏が語る、分譲マンション全区画へのEV充電コンセント導入までの経緯と合意形成のカギ
  • マンション管理組合で重視された「受益者負担の仕組み」と「共用部電気料金の切り分け」の具体的な実現方法
  • 「朝起きたら満充電!」自宅マンションで充電できる喜びと、一度味わうともう戻れない快適なEVライフの実体験

 はじめに


マンションやアパートなどの集合住宅にお住まいの方にとって、電気自動車(EV)の充電環境の整備は大きな課題です。特に分譲マンションでは、管理組合での合意形成や電気代の負担方法など、様々な懸念点があります。


この記事では、東京都港区の分譲マンション「コスモ麻布十番」で全駐車区画にEV充電用200Vコンセントを設置した事例をご紹介します。EVオーナーであり、理事長でもある小松崎氏への取材を通して、導入の経緯から実際の使用感まで、マンションのEV充電環境整備を考える方に役立つ情報をお届けします。


 物件概要


物件名 コスモ麻布十番
種類 分譲マンション
築年月 2000年1月
場所 東京都港区
駐車場 全5区画
充電設備設置区画 全5区画(全区画設置)
充電設備種類 EV充電コンセント(200V)
EV充電用電源 管理組合既存引き込み

導入のきっかけと選定基準


理事長としての視点からEV充電環境を考える

「最初はEVを所有していても、急速充電スタンドやスーパーチャージャーが街中にあれば自宅に充電設備がなくても不便はない、と思っていました」と小松崎理事長は振り返ります。


しかし、理事長としてマンション全体の将来を考える立場になり、「想像以上にEV普及は早く訪れそうで、その変化は不可逆」という認識に至ったそうです。また、「いつまで補助金があるかわからない」という考えもあり、導入検討を始めました。

充電設備選びで重視したポイント

当初は少数の共用充電設備の設置を検討されていましたが、WeChargeのサービス説明を聞き、「すべての車室にコンセントを設置することが重要」「普通充電の3.2kWの出力で十分である」という点を確認し、その選択が合理的だと判断されました。


小松崎理事長は選定の決め手について、「コンセントなので充電設備そのものの費用負担も数千円程度と非常に廉価で、故障も少ない点がいい」と話します。また、利用者の立場からは「充電した分だけが正しく課金される点や、携帯電話のように個別にお得な料金プランを選べる点も魅力だった」とのことです。


合意形成の過程と重視された「受益者負担」の考え方


丁寧な対話を重ねた導入プロセス

「理事会での反対はなく、総会決議でも賛成多数でした」と小松崎理事長。ただし、EVを持っていない住民にとっては充電の仕組みが言葉だけでは理解しにくいこともあり、丁寧な対話を重ねたことが成功の鍵だったようです。


特に議論が集中したのは「電気代相当額の返戻金の仕組み」と「受益者負担の考え方」。

「少数の充電設備を設置して収益を得る」のではなく、全区画に充電コンセントを設置し、WeChargeの仕組みで受益者負担を実現する考え方が理解されていきました。


小松崎理事長は「マンションへのEV充電設備導入のハードルは、技術面というよりも住民同士の合意形成」と指摘します。WeChargeを選んだ決め手の一つは「共用部の電気料金と切り分けができること」だったそうです。


導入までのスケジュールと費用


2022年2月頃に検討を開始し、WeChargeからの提案を受けて3月の理事会で導入プランの説明を実施。7月に補助金申請の手続きを行い、9月の臨時総会で可決されました。


総会では「受益者負担の仕組み」を細かく説明し、「充電利用をしないかぎりは費用が発生しない」「充電に利用した電気代相当額は管理組合に返戻される」ことなどを丁寧に説明したことが住民の理解を得るポイントでした。


工事は11月に実施され、わずか1週間程度で完了。設置費用は約230万円でしたが、国の充電インフラ補助金で8割以上が賄われたため、管理組合の実質負担はごくわずかで済んだとのことです。


導入後の使用感とEVライフの変化


自宅で充電できる快適さを実感

「自宅マンションで充電できない頃は外部の充電スタンドに通うことに不便を感じていなかったのですが、いざ自宅充電できるようになると、充電スタンドに行くことはなくなりました」と小松崎理事長。


日常の充電は完全に自宅充電に移行し、遠出するときだけ経路上の充電スタンドを利用するという生活スタイルに変わったそうです。「通常は、自宅のEVコンセントに充電ケーブルを挿しっぱなしにしておいて、旅行のときだけケーブルを抜いてトランクに入れて携行する。まさに、スマホと同じ感覚です」と話します。

EVオーナーとしての経済的メリット

小松崎理事長によると、EVに乗り換えてから走行距離が長くなったにもかかわらず、充電費用はガソリン代より安く済んでいるとのこと。


当初は「Guest」プランで約7,000円/月の充電料金でしたが、自分の走行距離に合ったお得な定額プランに切り替えたところ、料金が半分以下に最適化されたそうです。


「WeChargeはマンション居住者のライフスタイルによって個別にプランが選べることも魅力です」と小松崎理事長。「寝ている間に充電すれば、朝起きたら満充電になっているので、本当にコンセントで十分。自宅でEV充電できる生活は最高で、もう戻れません」と満足感を語っています。


マンション全体への波及効果


小松崎理事長のEV充電の様子を見た住民からも「そろそろEVに買い換えをしようかな?」という声が聞かれるようになったとのこと。


「マンション駐車場の全区画に充電コンセントが存在することで、EVへの乗り換えも進んでいくと感じています」と小松崎理事長は話します。


実際、コスモ麻布十番は最初小松崎さんのEV1台だったのが、2024年末には、5区画中3台がEV・PHEVとなりました。自宅で充電できる環境がEVシフトを後押ししている好例といえるでしょう。


 まとめ:分譲マンションでのEV充電導入成功のポイント


コスモ麻布十番の事例から見えてくるマンションEV充電導入のポイントは以下の通りです。


  1. 「全区画にコンセントを設置」という考え方が合理的
  2. 「受益者負担」の仕組みを明確にすることで合意形成がスムーズに
  3. 補助金を活用することで管理組合の費用負担を大幅に削減可能
  4. いったん自宅充電の生活を始めると、その快適さから戻れなくなる


この事例がマンションでのEV充電環境整備を検討されている方の参考になれば幸いです。

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